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【光太郎の朝】君の会社ではないんだよ・・・(2)

光太郎は、人事担当管理職と面談することになった。

先日の職場において、もめた経緯、内容、そして今後どうあるべきか・・・

上手に説明するのは苦手な光太郎だったが、緊張で口がカラカラになりながらも
状況説明に集中した。

 

人事次長:『組織なんて、上司が責任取るもんじゃないか?

だから、間違っていることをさせられてると自分が感じても、上司の言うことを聞いて、間違った結果を早急に導き出せばいいじゃないか?
変に会社を良くしなければ、、、という正義感を持つことで、チームの方向性がおかしくなって、結果までの時間が長引いたり、変な方向に行き、混乱を招くことよりも良いんだよ。』

 

人事次長:『それからね、良いか? この会社は君のものじゃないよ。
ここは、君が働いている会社ではあるが、社長の会社だ。
一般的に”会社はだれのものか”という議論があるが、君の会社ではないことだけは間違いないんだよ。
もちろん、私のものでもないんだが。』

 

★★★★★★★★


光太郎は、納得がいかなかった。

この数年、彼はとある役員に諭されたことがあった。

 

『言われたことだけをやるなら、ロボットにやらせる。』

 

『たとえば、お酒買ってこいと頼まれて、金を渡されたとしよう。
お店に言って、指示された銘柄が無ければ、どんなのが好まれるか、安売りをしていたなら、できるだけ多く買ってみんなで楽しめるか、そんなことを考えて動くことができる奴こそ仕事ができるんだ。』

 

『自分が会社を回している、そんな当事者意識をもって業務につくように、
良かれと思う良心をもって、会社を盛り立てていくように、、、』

 

自分自身が経営者の目線で、会社をどうハンドリングしていくか。
それを考えれば、上司の言うことが分かるはずだ。ということだった。


★★★★★★★★★

 

光太郎はそのことを思い出し、主体性を持って、自分で事態を好転させるように
動くことに何が悪いのか、説明を求めた。

 

しかし、その管理職の対応は機械的なものであった。

 

『危険な設備であるなら、安全に作業すればいい』

『動かない設備なら、そのままにしておけ。それは別の担当者の仕事。。』

『失敗しても上司が責任とるから・・・』

 

光太郎は、もはや議論は厳しいのではないかと感じた。

その文言は世間一般に言えば、一見、まかり通る理論だ。

 

危険な設備のまま作業するから事故が生じるのであって、危険な設備だからこそ作業を中止し、安全な設備に直して作業再開させるものではないのか?

 

動かない設備を放置すれば、生産は確実に落ちる。時間だけが過ぎ去るその状況を見過ごすことは、お客さんに供給できなくなる。それなのに看過してもよいってこと!??

 

そして、失敗して上司が責任をとる光景を一度も見たことがない。
現に、成果が上がらなかったと言って、査定を下げられた同僚もいた。


そういう勤務状況で、このやり取りに強烈な違和感を覚えた。

その人事次長は、状況を一方的に管理職側から聞き、実際の生産実務には疎く、

他部署の人間であるから、こういった返答になってしまうのは、やはり致し方無いものかとも思ったが、残念な気分で一杯になった。

 


光太郎は、会社はだれのものか? なんていう議論や、理念など吹っ飛んだ。

表向きの理想は存在しても、実質的に現実的にそういうものは意味がないと。

 

そして、役員が大いなる理想を語っても、下々が中途半端な理念の歪曲や小賢しい議論のすり替えが行われているような組織。
そんな組織の管理職はもはや、経営陣と当事者の連絡役であり、口八丁で何とかしていることこそが仕事になってはいないか?

 


創造性を持てだとか、自発性を持てだとか、あるいは、自分が経営者の目線でものを考えろだとかいう論説は存在するが、本当に主体性、自発性、創造性、経営者目線を併せ持つ能力がある人がいるとしたら、そんな人は即、起業できるのではないか? いや、した方がいいということになる。

そして、長年雇われ人をしていると、価値観がおかしくなっていくのではないかと思いだした。


光太郎の中に強い違和感を芽生えさせた事件であった。

 

 

 

 

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