忘年会シーズンが近づいてきた。
光太郎はこの季節が来るたびに思い出す、あるセリフがある。
■安定しているが故の苦悩
『光太郎、、、俺もお前もな、どこまで行っても雇われ人なんやぞ… 』
数年前の忘年会で当時部長に言われたセリフだった。
当時光太郎は自分と先輩社員と意見が食い違い、口論になったことがあった。
原因は、物の見方の観点の違いで生まれるような認識の食い違い。
客観的にいえば、両者とも正しく、ケースバイケースの問題であったのが、
先輩社員は自分のメンツを押し通し、タイミングがずれてることに違和感をもった光太郎が反論…。
そんな事で始まった口論であった。
当日夕方の忘年会、
それを聞きつけた部長が光太郎の横でそういったのであった。
同時に彼は次のようなことも添えた。
組織というのは、上から下への論理しか通用しないもので、
下がどれだけ正しいことを主張していても、上のものが下をねじ伏せていく、
そんな権力構造になっている。(だから上の者には嫌でも従うしかない)
その代りに、得られる毎月給料が入ってきたり、福利厚生が安定したり、
自営業者とは違った利点があるのがサラリーマンだ。
といった内容だった。
あれから数年が経ち、彼は専務まで上り詰めることができた。
有名企業の専務ともなると、社会的にも経済的にも満足の行く立場になったんだろうと周囲からは見えた。
しかし、光太郎は知っていた。
彼のプライベートを多少なりとも垣間見る機会があり、
彼の公私を含めた人生に何の羨望も感じなかった。
決して侮蔑こそしないが、あんな人になりたいと思える魅力がそこには無かった。
一生懸命働いた末のゴールがあれなのか。
その後役員規定で定年が待っていて、いざ自由にやりたいと思ったころには
体力も気力も尽き果てる。そして残す寿命はあと数十年…
そんな人生設計しか描けないのか...
所詮雇われ人なんやぞ・・・ そのセリフは彼にとって考えさせられるものであった。
雇われ人って何だろう、雇い人って何だろう…
出世して組織の上層部に登り詰めた者ですら、寂しい事を口にしてしまうって
何なんだろう。
今年も忘年会のシーズンがやってきた。