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『”再現取れない奴はダメなんだよ』

http://www.flickr.com/photos/54591706@N02/10856848295

読者の方は、理系という言葉を聞いてどんなイメージを持つだろうか?

 

理系の理という漢字は、玉の筋目を表現している象形文字と言われる。
古来中国で玉の採掘時に、玉の部分と不要な部分を筋目で分けていたからだ。
それが転じて物事の良い物と悪い物を区別するという意味になった。
現代では、理系といっても多岐にわたる分野を指すが、一言でいえば、
何らかの目的に対する良い物と悪い物を区別するための手法や技術のことであると私は思うのだ。


今日 ”STAP細胞は結局なかった” という報道がなされた。


この一件は、私の周辺でもお茶飲み話として上がった。

 

”ああいう(STAP現象)ことが簡単にできると、製薬会社や医療など、今まで利権に預かっていた人々が一瞬にして儲けられなくなる。
だから闇から闇に葬り去られた”
とか、
”世紀の大発見だからこそ、彼女は命を狙われた。
その証拠にカギを握る統括上司の笹井さんはまさに暗殺された。”

とか。


その逆に、
”病的な嘘つきというのは実在する。
しかも、どんなプロファイラーやウソ発見器ですら見抜けない。
なぜなら自分自身に対して何の悪気やためらいもないからだ
そもそもそんな奴に権利と環境を与えてしまったのが悪い”
とか
”いくら小娘でも、あそこまで周辺の人生を狂わせる奴は犯罪者でしかない”
とか
”周りがどう思っていようと、
200回以上も成功してるなら、どんな衆人環視の中であってもできるんじゃないのか?
”あります”と言い切った以上再現取れるものであるべきじゃないのか。”

などなど色んな意見があった。

今、理系に携わる人間は厳しい。
理論から結果に繋がらない、つまり実用的でない研究はあまり歓迎されない傾向にある。『世の中に貢献してこその研究成果』という認識が強すぎる。
だから、任期制の組織にして結果が芳しくなければ別の優秀な研究者を呼んでくるという仕組みになっている。

一見、納得できる話かもしれない。
しかし、短期的に結果を出そうと不正を働く研究者が生まれる原因にもなる。


これまで短期的にくだらなくて長期的に大きな成果につながる研究は存在するし、今まで存在した。
しかし、それを見抜くのは至難の技だから今に至ったのだろう。


だが思うのは、理系の学問や仕事に携わる者がそんなウソついていいのか?

情に訴えるのではなく、理で立ち向かうべきじゃないのか。
実験結果に対して、現象を淡々と客観的に判断分析するものであって、
いつの間にか自分の都合よく曲げて解釈になってないか??

やったことに対して出来たか、出来なかったか。それだけでいいのだ。


例の小娘に問題があったのは当然だが、そんな子に分不相応な権限が与えられた環境構造にも原因は無かったのだろうか?
何故そんな風潮になってしまったか、そして今後そんな子が出て来ない体制を作ることを考慮する時代に来たのではないか。

理系人間の端くれとして、腹に落ちかねる今回の事件だ。


数年前の昔、非常に聡明な私の友人はポツリと言った。

 

『どんな研究したって、再現を取れないやつが何を言ったってダメだよ。
今に天罰がくだる。』

 

きっと彼は今日の出来事が見えていたのだろう。


photo by NIAID